10:00-10:24 マヤ&クエンティン共通パート
10:24
クエンティンは力いっぱいドアを閉める。意識していたわけではない、体か勝手に力を
込めてしまった。
クエンティンは怒っている。
クエンティンがマヤを誘拐してくる際、念のために斥候を放っておいた。
今、赤い鎧のヒュームからの報告が、その斥候からの報告だった。
どうも自分はマヤをここに連れ来る時に尾行されていた様だ。
その上、自分を尾行していたヒュームは吟遊詩人の酒場に入って行ったと報告を受けた。
それは、この誘拐計画がジュノ選挙管理委員に漏れていた可能性があることを意味する。
しかし、ジュノ選挙管理委員に誘拐計画の情報が漏れていたら、なぜマヤの居場所を特
定できているのに、1時間半もの間なにもしてこないのだろうか。
斥候の報告だと、そのヒュームもすぐには吟遊詩人の酒場に入らず、1時間近くの間、酒
場の前に突っ立っていたとも報告を受けている。
不可解な点が多々あるのも事実だ。状況を把握するには情報が足りない。
「マヤをいつもの場所に連れて行きなさい。私もすぐ行くが、着くまで誰も近づけるな。
人は居るだけ連れて行け、ギルが足りないなら後で言い値を払う。」
クエンティンはそう言いながら、帯の付いたヴァナ・ディール紙幣を2束、赤い鎧のヒ
ュームに渡す。
「かしこまりました、クエンティン様。ただちに。」
赤い鎧のヒュームは紙幣を受け取ると走っていった。
今、自分はなかなか不利な状況なのかもしれない。しかし、そう判断するには情報が絶
望的に足りない。
クエンティンは一旦、場所を変えて仕切りなおすことにした。
10:35
クエンティンは一旦、海神楼を出ると、人目に着かない様に、海神楼の入口を監視する。
もし、ジュノ選挙管理委員がマヤを奪還するつもりがあるなら、どんなに遅くても、そ
ろそろ来る頃だろう。
自分に気付かれずに尾行した奴の顔を確認しておこうと思ったからだ。特徴は、ヒゲの
生えたヒュームだそうだが、さすがにそれだけは誰だかわからない。だが、腕は確かだ
ろう。
クエンティンは待っている間、この後どうするべきか考える。
天晶堂はマヤも移動済みだし、自分も外に出ている。天晶堂が口を割るとは思えないか
ら、マヤがどこに連れて行かれたのか分らないだろう。
早々に、マヤをヘルロンドの餌食にするのも手なのだが、今回ほど事件が大きくなると、
ただ単にマヤが失踪したと片付けられる可能性は低いだろう。ましてやマヤは筆頭候補だ、
失踪する理由がない。
そのため万が一、本格的な調査が行われたら、自分や最悪の場合だとサンドリア王にも
嫌疑がかかる恐れがある。それだけは避けなければならない。
そうこう考えていると、話声が聞こえてくる。クエンティンは気付かれない様に細心の
注意を払い、入口を見る。
クエンティンは海神楼に入って行った面子を見て愕然とする。状況は悪い方、悪い方に
転がっていく。
入ったのは4人、1人はカレンというマヤの秘書。
1人はヒゲを生やしたヒューム、このヒュームが尾行したのだろう。
1人はエルヴァーンの女だ。これは誰だか分らない。しかし、問題なのは最後の1人。
アルトニオが乗り込んで来ている。
クエンティンはサンドリア王の勅命により、間接的にアルトニオを当選させようと暗躍
しているのに、あろうことかアルトニオがマヤの奪還に乗り出した。
アルトニオが奪還に乗り出したということは、事実上アルトニオは自分の障害となった。
10:53
クエンティンはフラフラと頭を抱えながらジュノの街中を歩く。
「まったく。運がないのか。」
普段、運だのジンクスだの口にすることのないクエンティンであるが、そんな一言がつ
い出てしまう。それほど、いま自分の置かれている状況に絶望している。
確かに、今日の仕事は勅命を受ける前から予想できていたし、多少困難ではあると思っ
ていた。だが、これ程とは。
とりあえず、マヤを移動させた場所に移動しよう。あまりグズグズしていられない。
気を持ち直して、歩き出す。
ジュノ下層の階段に差し掛かったところで、周りが少しざわつき始める。
「ねぇ。なんだろう、アレ。」
「見たこと無いな。エクレアかな?」
周りの冒険者が小声で話しているのが聞こえてくる。
クエンティンは直感的に感づいて、自分が背負っているヘルロンドを見る。
ヘルロンドが青白く光っている。
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