11:00-11:34 クエンティン&ウエバー共通パート

11:34
「はぁはぁ……」
 エルメスクエンチャの効果時間が切れた。
 クエンティンは珍しく息を切らしている。
「……ッチ。最悪ね」
 息を切らす以上に珍しい悪態をついている。最悪なんて感情を覚えたのは何年振りだろ
うか。
 息が切れているとはいえ、立ち止まっている訳にもいかない。ペースが落ちたとはいえ、
走るのをやめない。  すると、長い洞窟を抜けてクフィム島に入った。
「追っては……来るだろうね。急がなくては」
 クエンティンは後ろを振り返る。
 ウエバーとマットとかいう2人組のことだ。
 念のためヘルロンドを見る。もう青白い光は消えている。
「距離は取れたみたいね。急げば問題ないでしょう」
 クエンティンは、さらに走り続ける。
 ヘルロンドが青白い光を放つのは、今までに何度かある。
 ラテーヌ高原や、コンシュタット高地、タロンギ大渓谷にある、ホラ・デム・メアの遺
跡に近づくと、このヘルロンドは青白い光を放つ。
 クエンティンは、ヘルロンドも各遺跡もジラード時代に作られた物のため、何かしらの
共鳴反応でヘルロンドが光っているのだと考えている。
 どのような目的で、どのような原理でなどは関係ない。このヘルロンドは、そういう類
の物であると勝手に納得している。
 ウエバーの持っていた短剣も青白く光っていた。ヘルロンドと同じ追憶の戦器の1つな
ら、きっと2つが共鳴しあったため青白く光ったのだろう。
 しかし、短剣と両手鎌だったら両手鎌が一方的に目立ってしまう。よって、先ほどはク
エンティンだけが注目の的になってしまった。
 クエンティンが向かっているデルクフの塔もまた、ヘルロンドが青白く光る場所だ。
「そういえば、ウエバーとかいうエルヴァーン。タルタルとエルヴァーンのハーフって言
ってたわよね?」
 クエンティンは走りながら考える。
 どこかで聞いたことがある……ような気がする。
 だが、どこで聞いたか思い出せない。
 クフィム島は寒い。季節に関係なく雪が降る。運が良ければオーロラだって見ることが
できる。
 クエンティンは、その寒空のなかを走りぬける。

11:46
 クフィム島は駆け出しの冒険者にとっては格好の狩場だ。
 祖国を出てジュノ公国に来たら、次はクフィム島でレベリングと相場は決まっている。
 そのため、クフィム島を走ると何人もの冒険者、何組ものパーティとすれ違う。
 クエンティンも、以前はここでレベリングに励んだ。
「hhhhhhhhhhh」
 大声で叫びながら誰かが走ってくる。それを追いかけるようにイビルウェポン族のモン
スターが付いてくる。
 不運にもイビルウェポンのアクティブに引っかかったようだ。
「そこの逃げているの。こっちに向かってきなさい」
 クエンティンは、素早く詠唱し、魔法を発動。ポイズンだ。
 これにより、イビルウェポンのターゲットがクエンティンに向けられる。
 冒険者から、今度はクエンティンめがけてイビルウェポンが襲い掛かる。
 だが、クエンティンは慌てる様子もなく、背中のヘルロンドを取り、構える。
 そして、軽くステップを踏むと、一閃。
 僅か、一太刀でイビルウェポンを切り伏せた。実力が違いすぎる。
「はあ、はあ。あ、ありがとうございます。助かりました」
「気にしないで。今度はもっと気をつけるんだ」
 クエンティンはそういいながら、懐からサイレントオイルを何個か取り出して、冒険者
に投げる。
「わ、ありがとうございます。あの、お代を」
「ちょっと先を急いでいるんだ。またね」
 そう言うと、クエンティンは冒険者を残して先を急ぐ。サイレントオイルを使えばイビ
ルウェポンに発見されない。心配ないだろう。
 白くそそり立つデルクフの塔は、もう目の前だ。
 うっすらとだが、またヘルロンドが青白く光りはじめた。

11:58
 クエンティンは足を止める。
 デルクフの塔の入り口に到着した。
 すでに、天晶堂は海路で、マヤをデルクフの塔に連れてきている手筈になっている。
「問題は、このあとね」
 クエンティンはつぶやく。
 一番の問題は、図らずしもアルトニオが自分の敵になってしまったところだ。
 マヤが誘拐されれば疑われるのは対立候補のアルトニオ。その疑いを逸らすために捜査
に協力。理由はきっとそんなところだろう。
 次、マヤに会ったらどうするか。
 ヘルロンドで手に掛けるか。
 それとも、もう少し交渉してみるか。
 どちらにしろ、次でケリをつけなければならない。

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