10:00-10:24 マヤ&クエンティン共通パート

10:24
 ミスラが急に部屋から出て行ったかと思うと、勢い良くドアを締める。
 何事かマヤは分からない。
 マヤはキツく縛られているため、相変わらず身動きは取れない。やはり、この隙に逃げ
出すことはできない。
 マヤは点けっ放しのテレビを見る。相変わらず、マヤが誘拐されたニュースが放送され
ている。
 どういう訳かまではわからないが、親友のカレンがテレビで大々的に放送してくれたの
が、まだ自分がミスラの不気味な鎌の餌食になっていない要因になっている様だ。
 とにかく、今は生還することを第一に考えなければならない。
 今は、あのミスラを極力刺激しない様にし、カレンやカチェアが助けにきてくれるのを
待っているしかなかった。
 なんとも情けない話だ。マヤは肩を落とす。

10:29
 ドアがあけられる。
 入って来たのはミスラではなく、赤い鎧のヒューム。しかも三人。
「今から移動をする。
 大人しく付いてくるのであれば足の縄は一旦切り歩いてもらうが、抵抗するというので
あれば猿ぐつわを噛ませ麻袋に入れて運ぶ。
 好きな方を選べ。」
 ヒュームは入って来るなり聞いてきた。
 ヒュームの目はマヤが質問することを許さず、YesかNo以外の言葉は受け付けない。
そんな脅迫じみた目をしている。
 仮に、足の縄を程いた瞬間抵抗したところでヒューム三人にかなう筈は無く、両手が自
由でなければ魔法を詠唱することもできない。
「わかりました。大人しく付いていきます。」
 マヤはヒュームに答える。
 それを聞くと、ヒュームは腰から短剣を取り出し、マヤの膝に縛られた縄を切る。
 まだ腕は結ばれているとはいえ、かなり楽な態勢を取れるようになった。
「こっちだ。ついて来い。」
 腕を結ばれているだけとはいえ、立ち上がるのは意外に難しい。しかし、ヒュームは手
助けすることなく手招きするだけだった。

10:36
 言われるままついて行くと桟橋みたいな所に連れて行かれた。
 そこには、セルビナ・マウラ間を繋ぐ機船航路で使われるのと同型の船が2隻停泊して
いる。
 目の前には海が広がり、左右には陸地が見えるため、まだ自分はジュノにいるのだろう
と予想ができた。
 しかし、そうなるとここは、どこになるのだろう。飛空挺が停泊する桟橋とは全く違う
作りになっている上、停泊している船も違っている。
 このヒュームに何かを聞いても、何も答えないだろう。
「これに乗れ。」
 ヒュームはボートが少し大きくなった感じの船を指さす。
 ボートの船尾にモーターが装備されている。
「何をしている。さっさと乗らないか。」
「ちょっと待って、どこへ連れて行くつもりなの?」
「ふん、答えるとでも思うか?今からでも麻袋にいれるぞ。」
 ヒュームは睨みつける。
「わ、わかったわ。」
 マヤはボートに乗り込む。この状況下で抵抗は無意味だ。
 マヤに続いて、ヒュームも乗り込む。
「よし、出せ。」
 ヒュームが指示を出す。
 すると、ボートにエンジンがかかり、動き出す。
 桟橋を出たボートは、次第にスピードに乗り始める。波を掻き分けながら進むため良く
揺れる。
 マヤは回りを良く観察する。
 先ほどの選挙の投票開始の放送と、現在の太陽の位置からして、自分はほぼ真北に向か
っているのが予想できる。
 どうも、クォンとミンダルシアどちらの大陸にも向かっていないようだ。どんどん陸地
が離れていく。

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